一文字(松本奉巳) 切れ波止(越智義則) ソロバン(上田 敬,西村 文夫) 
 新波止
(熊懐 弘毅) テトラ(西島 祥一)  前打ち(鳥喰 真悟)
     落とし込みふう前打ち(テトラ)
西島 祥一

   シーズンを通してコンスタントに釣果を得るためには、落とし込みと前打ちとを上手に使い分けなければならない。どちらか一つにこだわると、どうしても満足できない釣果が増えてくる。
 
  私は、出来ることならボーズは避けたい。ボーズのときの帰りの足の重いことを皆さんも経験されているだろう。ボーズをくわないようにするにはどうすればよいか。釣行前にいつも考える課題である。そしてその結果が、最初に書いた結論、すなわち状況に応じた落とし込み釣りと前打ちとの使い分けなのである。
 
  私の釣行は、週末に限定される。週末の例に漏れず、私のホームグランドにしている博多沖防も、やはり釣り人が多い。人気の高いポイントは特に集中し、平日ならよく釣れるポイントも、釣り人が多いと魚は怖がってなかなか口を使おうとしない。釣れる確率も相当下がってしまう。そんなときに威力を発揮するのが前打ちなのである。
 なぜなら怖がった魚は沖へ逃げるか根に隠れるかで、魚が全くいなくなるわけではない。食いは渋くなるが、エサのもっていき方と誘い方次第では、前打ちで喰ってくる場合がある。だから前打ちをシーズン早期と晩期の主力の釣りばかりでなく、盛期でも釣れないときの神頼みならぬ前打ち頼み、最後の切り札としているのだ。
 
  ここで私がいう前打ちとは、多くの人が同じような釣り方をしていのだが、あきらかに違うのは、底あるいはそのごく近くでアタリを取ろうとしているかどうかと言うことだ。  私の釣り方は、前打ちといっても落とし込みにきわめて近いもので、目印を使うし、その目印を水面に浮かべて、ほとんど落とし込みと同じような仕掛けの沈め方をする。そのため横で見てみていれば全く同じに見えて不思議ではない。
 
   それでは、なぜこの釣りが前打ちかというと、
 
 一つはあきらかに底を取りながら、底を意識して釣っていること。
 
 もう一つは、竿下よりも前を釣る釣りであり、誘いも前方から手前へ、あるいは横への動きを中心にしていること。
  つまり、動作の上では、一回々々仕掛けを上げては下ろすという落とし込み釣りよりは、細かく上げ下げしながら底中心に釣る前打ちに近いからである。
 私自身はこの釣りをテトラできわめて有効な前打ちのバリエーションと思ってるのだが、いかがだろうか。

  ただし、他の釣り場でも似たようなことはあると思うが、博多沖防のテトラは、次の二つの条件がそろわないと釣りにならないことも事実なので、釣り方を詳しく説明する前に、その条件を紹介しておきたい。
 
    まず第一に北西風(海風)が吹いていること
  南風が吹くと濁りがなくなってしまい、底がまる見えになってしまう。この場合は釣りをあきらめて、底の状況の確認に時間を当てた方が賢明だ。

 次に曇りの日か、午前11時以降であること
   ほぼ南北にのびる防波堤で、テトラの方向、すなわち南西向きに釣ると、午前中は水面に影が伸びる。特に日の出2時間後ぐらいからが、長くて強い。いくら身を低くしても、影は遠慮なく水面に映ってしまう。
  垂直に切り立った防波堤の壁を釣るのであれば、クロダイのいるであろうところは防波堤自身の影に入ってしまうので、人影は気にならないだろうけど、テトラは傾斜があるため、特に前方を狙おうとすればするほど、直接クロダイのいるとろに影が映ってしまうことなので、この注意点が必要になる。

  使用する仕掛けは、左の図のように通常使われる落とし込み仕掛けで十分だ。ただし、竿は少し長めがよく、ハリスも長めにセットする。これで落とし込みふう前打ち仕掛けの出来上がりとなる。

  釣りを始める前にひとつ心にとめておいていただきたいことがある。それは、より広範囲を探ることによりクロダイと接触する確率を高めると言うことがこの釣りにおいても基本であるが、前打ちではその点が落とし込み釣りに比べて劣ってしまう。だから、ポイントをしっかりと押さえて、効率よく釣る必要がある。整然と並んだテトラを攻めるのもよいが、少しでも変化のあるところを攻めたほうがより効率的と考えるべきだろう。

  では実釣に移ろう。
 潮の流れが速い場合は、いちばん楽な釣りが出来る。ハリにエサを付け狙うポイントの潮上に投入し、目印はそれよりもさらに潮上に並べるように水面に置くと、そのまま流れながら目印が沈んでいくはずだ。そして沈みが止まったとき、着底かクロダイがエサをくわえたえたと言うことになる
 着底なら竿先を上げて糸を張り、あたりをききながら仕掛けを上げていく。しかし、このときどれぐらい上げるのか判断に困ると思う。
  テトラの組まれている所に仕掛けを投入するのだから、隙間に入ってる場合とテトラのてっぺんに乗っている場合では差があり、単純に何センチ上げるというようなことは通用しない。だから多少大きめに持ち上げる方がよいかと思う。

   だいたいこれくらいかな、という所まで上げたら、そこでいったん止める。エサが流れに乗って先行していき、次に落としたい所にきたときに竿を下げて、再び目印を水面に並べる。次に沈みが止まった所で、またアタリをききながら上げるという動作を4、5回繰り返したら、次のポイントへ移動する。
 
  この一連の動作の中で、エサを浮かして次に落とすまでの間に、しばらく止めて先行させるという行為は、重要な意味を持つので決しておろそかにしないでいただきたい。それはエサを先行させ、クロダイにまっ先にエサを発見させるためだ。
 
   竿先でアタリをとる一般的な前打ちと違い、この釣りではエサが沈んでいくときのアタリは目印でとる。仕掛けを張らずにゆるめているため、クロダイはあまり違和感を感じないのか食い込み抜群によい。また、目印が止まったのを目で確認してから竿を浮かせるのだから、仕掛けを緩めているせいもあって、時間にして0.5秒ぐらいのタイムラグができる。これがちょうどよいのか、食ってきたクロダイがほとんどがっちりハリ掛かりする。食い気があまりなく好奇心からくわえただけだと思えるクロダイが、しっかりハリ掛してくれる場合が多い。
 
   次に潮の流れがないか、あっても緩い場合には、先ほどの釣法ではポイントを探るスピードが遅く、幅広くカバーすることができない。そきで、強引にエサを引きずり回して広く探る手法をとる。
 博多沖防のテトラの場合、クロダイのアタリはテトラの水面下から2段目ぐらい、カラス貝の付着している層の一番下周辺に集中する。これを堤防全体で考えると、堤防に平行な、幅約1メートルぐらいのポイントが帯状にのびていると考えられる。
 同じ打ち返し回数で効率よく探るためには、正面に打ち込んでいては効率が悪い。帯に対して直角に横切る線は短い。斜めにすればこれが長く取れる。角度を大きく取れば取るほど長くなるわけで、その分、クロダイと出会うチャンスも増えることになる。
 
   波と濁りがある程度では釣り人を隠してくれても完全ではないし、するどい聴覚によってクロダイが釣り人の気配を感じ取ってしまったら元も子もない。だから移動を静かに行うのは当然だが、仕掛けを遠くへ打ち込み、食わせるポイントもできるだけ遠くに持っていきたい。その意味でもポイントを斜めに釣ることは、足場から同じ距離のポイントを斜め横から少しでも離れて釣る効果がある。操作に無理のない長竿を使い、操作できる範囲で糸を伸ばして、こういった状況に対応する。
 
    これまでのことを念頭に置いて、実際に釣ってみよう。
  斜め沖へ向かって、少しでも流れがあれば潮上に向けて、本命ポイントの少し沖、クロダイが食うと思われる限界の距離にエサを落とす。目印が沈んでいき、着底を確認するまで糸を送っていく。
 着底したらすぐにきき上げ、エサを浮かして手前へ引いてくる。引く距離は、沈んでいるテトラの向こう側までエサがくるぐらい引っ張ってくる。そのまま竿先を下げ、目印を水面に並べる。このとき、余分な道糸は巻き取っておく。
 ふたたび目印が止まるのを確認して、竿先を上げ仕掛けを手間に引いて、次の段のテトラの向こう側に持ってくる。このとき、仕掛けが手前によってくるのと、手前に行けば行くほど浅くなるので、竿先は少し大きめに上げる必要がある。
 本命ポイントを過ぎるまで、これを繰り返して行い、次の場所へ移動する。実際にはこれらの移動は目に見えないので、水が澄んだときに確認した上で行うのがよいだろう。

  手前に引いてくるときに問題になることがある。手前に引くということは、目印、ハリス、ハリという順番になるわけだ。そこにクロダイがいたとすると、クロダイの目からはハリスは丸見えになっているだろう。これでは食い気の強いクロダイしか釣れないと思うので、私はなるべく細いハリスを使うようにしている。ただし、釣れても取れないのでは場荒れするだけで意味がないので、自分自身の使える最低限の細いハリスにするべきだろう。 目印が止まったらきき上げることを繰り返してるうちに、根掛かりとは違うモゾモゾという感触が伝わってくることある。これがアタリで、目印には変化がないのに、ゆっくりくわえて走っている場合と、その場でくわえたままじっとしている場合に、このアタリが出ると考えられる。アタリのほとんどがこれで、ほかに2割くらい引き込みアタリがあるくらいだ。とにかくおかしいと思ったら、アワせをする方がよいだろう。

 落とし込みふう前打ちと銘打ったが、小型のテトラが積まれている釣り場なら、たいていの場所で通用する釣法だと思う。また中型以上のテトラの釣り場では落とし込み釣りの要素が大きくなるが、工夫次第では応用することも可能だろう。
  とにかく固定概念にとらわれず、自分で考えたことをいろいろ試してみることが何よりも大切だと思うので、そのための参考になれば幸いである。

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